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インスリンポンプに関連するキーワード

総インスリン量(TDD

血糖値を安定させるために、1日に必要なインスリンの総量を指します。

基礎レート

基礎インスリンとして、食事に関係なく24時間少しずつ注入されるインスリンの量です。これは、1時間ごとに投与される超速効型インスリンの単位数で表されます。
インスリン頻回注射からポンプ療法に変更する際、基礎レートは以下の計算で求めることが可能です。たとえば、頻回注射でTDD35単位の場合、ポンプ使用時にはTDDを一般的に20%減らし、28単位に設定します。

基礎レートの割合はTDD35%50%が目安です。ここでは40%として計算すると、28単位の40%11.2単位となります。小数点以下を切り捨て、1日あたりの基礎インスリン量を11単位とし、これを24時間で割ると、1時間あたりの基礎レートは約0.45単位となります。

一時基礎レート

基礎レートを一時的に変更する機能です。

例えば、長時間の運動を行う際に、基礎レートを数時間30%減少させることが可能です。細かく調整でき、0.025単位/時間~変更可能です。

ボーラス

食事や間食で上昇した血糖値を抑えるために一度にインスリンを注入することを指します。食事に対する「フードボーラス」や、高血糖を調整する「補正ボーラス」があります。

インスリン効果値

インスリン1単位で血糖値がどれくらい下がるかを示す指標です。

計算には1500ルール、1700ルール、2000ルールが使われます。インスリン抵抗性のため多くのインスリンが必要な患者さんは1500ルール、標準的な患者さんは1700ルール、インスリンの効きが良く必要なインスリンが少ない患者さんは2000ルールを使います。

例えば、TDD34単位の場合、1700ルールを使うと、インスリン効果値は「1700 ÷ 34 = 50」で、1単位のインスリンで血糖値が50 mg/dL下がることを示します。この値は運動や時間帯によって変化します。

ルール

対象

インスリン効果値

1500ルール

インスリン抵抗性が強い場合=多くのインスリンが必要

1500÷ 34 44

1700ルール

標準的な場合

1700 ÷ 34 = 50

2000ルール

インスリンの効き目がよい=インスリンの必要量が少ない

2000÷ 34 59

糖質/インスリン比

インスリン1単位で処理できる炭水化物(糖質)量を指します。

計算には300ルールを使用し(400ルールや500ルールを使うこともある)、TDD30単位の場合、糖質/インスリン比は「300 ÷ 30 = 10」となります。この値も時間帯により変わることがあります。日本人の場合、朝食の糖質/インスリン比は昼・夕食の糖質/インスリン比に比べて小さくなると言われています。

カーボカウント

適切なボーラス投与には食事の糖質量を把握する「カーボカウント」が不可欠です。栄養成分表示を見るようにしましょう。これにより、インスリンポンプを用いた糖尿病管理がより正確になります。

インスリンポンプの主な機能

インスリンポンプは、基礎レートとボーラスとして超速効型インスリンを注入する機器です。以下の機能を備えています。

  • インスリン注入の一時停止: 低血糖リスク時には、基礎レートやボーラスの注入を一時停止できます。
  • アラーム機能: 電池の残量や注入停止、注入回路の閉塞、リザーバーのインスリン不足、低血糖・高血糖を予測するアラームなどが設定されており、インスリンポンプ使用中のトラブルを避けることができます。
  • 残存インスリン管理: ボーラス注入後も数時間(約3-6時間)インスリンが残るため、短時間に繰り返しボーラスを打つと低血糖リスクが高まります。ポンプはこの残存インスリンを管理し、低血糖を防ぎます。
  • 最大注入量の設定: 安全のため、ボーラスや基礎レートの最大量を設定することが可能です。

当院で採用しているインスリンポンプ

当院では、Medtronic社の「ミニメド780G」を採用しています。このポンプは、基礎レートと補正ボーラスの両方を自動調整できる先進のテクノロジー、「Advanced Hybrid Closed Loop System」を搭載しています。

基礎レート設定のポイント

基礎レートは常に一定ではなく、運動や病気、女性の月経周期、旅行などの環境や体調の変化に応じて柔軟に調整する必要があります。

例えば、ある患者さんが以下のように基礎レートを設定している場合を考えてみましょう。

0:005:00の間は1.2単位/

5:0012:001.8単位/

12:0018:002.0単位/

18:0024:001.5単位/

もしCGMのデータで、6:007:00頃に血糖値が60-70 mg/dLに低下している場合、基礎レートの調整が必要です。この場合、基礎レートを上げる時間を7:00以降に遅らせることで、低血糖を防ぐことができます。

ボーラスについて

食事のタイミングに合わせたボーラス投与
ボーラスの投与は、食事の1530分前に行うのが理想的です。食後15分ほどで血糖値が上がり始め、60分後にピークに達します。一方、インスリンの効果が最大となるのは投与後90100分後です。このタイミングを覚えておきましょう。

ボーラス投与の計算方法

例として、糖質量100 g、インスリン効果値50、糖質/インスリン比10で計算してみます。

血糖値が目標範囲内の場合

食事前の血糖値が目標範囲内なら、食事中の糖質量に応じたインスリンをボーラス投与します。糖質量100 gの場合、10単位のインスリンをボーラス投与します。

血糖値が高い場合

例えば、食前の血糖値が250 mg/dLで、150 mg/dLまで下げたいときは、食事の糖質量に対する10単位のボーラスに加えて、補正ボーラスとして2単位を追加します。つまり、合計12単位のボーラスが必要です。補正ボーラスは次の計算式で求めます:

(現在の血糖値 - 目標血糖値) ÷ インスリン効果値

血糖値が低い場合

  1. 糖質摂取で補正: まず、15gの糖質を摂取し、15分後に血糖値を再チェック。目標範囲に戻るまで繰り返し、血糖値が安定したら通常のボーラスを行います。
  2. ボーラス計算機(ボーラスウィザード)の使用: インスリンポンプを使い始めるときに、血糖値の目標範囲、糖質/インスリン比、インスリン効果値、インスリン残存時間入力しボーラス計算機を設定します。インスリンポンプに血糖値と食事の糖質量を入力し、ポンプが示す減量されたボーラス量を投与します。
  3. カーボカウントを減らして調整: 血糖値が70 mg/dLで、糖質量が100 gの場合、通常のボーラス量10単位から3単位減らし、7単位のボーラスを投与します。これにより、低血糖リスクを回避しながら血糖値を調整できます。

ボーラスのタイプ

  • ノーマルボーラス: 短時間でインスリンを一気に注入する方法です。
  • スクエアウェーブボーラス: 脂質の多い食事に対応し、インスリンを長時間かけてゆっくりと注入します。脂質の多い食事は消化・吸収が遅いため、血糖値の急激な変動を避けたいときに有効です。会食など、長時間にわたる食事に適しています。
  • デュアルウェーブボーラス: ノーマルボーラスとスクエアウェーブボーラスを組み合わせた方法です。ピザや中華料理のように、糖質と脂質の両方が多い食事の際に便利です。通常、ノーマルボーラスとスクエアウェーブボーラスを50%ずつに分けて投与します。たとえば、糖質量が100 gで糖質/インスリン比が10の場合、5単位ずつに分けます。

<参考文献>

インスリンポンプとCGM2版 糖尿病をうまく管理するためのガイド

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