基礎レートとボーラスインスリンのポイント
基礎レート設定のポイント
基礎レートは常に一定ではなく、運動や病気、女性の月経周期、旅行などの環境や体調の変化に応じて柔軟に調整する必要があります。
例えば、ある患者さんが以下のように基礎レートを設定している場合を考えてみましょう。
0:00~5:00の間は1.2単位/時
5:00~12:00は1.8単位/時
12:00~18:00は2.0単位/時
18:00~24:00は1.5単位/時
もしCGMのデータで、6:00~7:00頃に血糖値が60-70 mg/dLに低下している場合、基礎レートの調整が必要です。この場合、基礎レートを上げる時間を7:00以降に遅らせることで、低血糖を防ぐことができます。
ボーラスインスリンのポイント
食事のタイミングに合わせたボーラス投与
ボーラスの投与は、食事の15~30分前に行うのが理想的です。食後15分ほどで血糖値が上がり始め、60分後にピークに達します。一方、インスリンの効果が最大となるのは投与後90~100分後です。このタイミングを覚えておきましょう。
ボーラス投与の計算方法
例として、糖質量100 g、インスリン効果値50、糖質/インスリン比10で計算してみます。
血糖値が目標範囲内の場合
食事前の血糖値が目標範囲内なら、食事中の糖質量に応じたインスリンをボーラス投与します。糖質量100 gの場合、10単位のインスリンをボーラス投与します。
血糖値が高い場合
例えば、食前の血糖値が250 mg/dLで、150 mg/dLまで下げたいときは、食事の糖質量に対する10単位のボーラスに加えて、補正ボーラスとして2単位を追加します。つまり、合計12単位のボーラスが必要です。補正ボーラスは次の計算式で求めます:
(現在の血糖値 - 目標血糖値) ÷ インスリン効果値
血糖値が低い場合
- 糖質摂取で補正: まず、15gの糖質を摂取し、15分後に血糖値を再チェック。目標範囲に戻るまで繰り返し、血糖値が安定したら通常のボーラスを行います。
- ボーラス計算機(ボーラスウィザード)の使用: インスリンポンプを使い始めるときに、血糖値の目標範囲、糖質/インスリン比、インスリン効果値、インスリン残存時間入力しボーラス計算機を設定します。インスリンポンプに血糖値と食事の糖質量を入力し、ポンプが示す減量されたボーラス量を投与します。
- カーボカウントを減らして調整: 血糖値が70 mg/dLで、糖質量が100 gの場合、通常のボーラス量10単位から3単位減らし、7単位のボーラスを投与します。これにより、低血糖リスクを回避しながら血糖値を調整できます。
ボーラスのタイプ
- ノーマルボーラス: 短時間でインスリンを一気に注入する方法です。
- スクエアウェーブボーラス: 脂質の多い食事に対応し、インスリンを長時間かけてゆっくりと注入します。脂質の多い食事は消化・吸収が遅いため、血糖値の急激な変動を避けたいときに有効です。会食など、長時間にわたる食事に適しています。
- デュアルウェーブボーラス: ノーマルボーラスとスクエアウェーブボーラスを組み合わせた方法です。ピザや中華料理のように、糖質と脂質の両方が多い食事の際に便利です。通常、ノーマルボーラスとスクエアウェーブボーラスを50%ずつに分けて投与します。たとえば、糖質量が100 gで糖質/インスリン比が10の場合、5単位ずつに分けます。